臓腑弁証の第5回目は”腎”の不調についてです。
腎虚の症状と、その治し方、処方される漢方薬について私の漢方ノートを公開していきます。
腎の働きは主に二つあります。
・水を全身に巡らせる
・精(生命力)を貯蔵する
また納気という、気をストックする働きもあります。
腎の不調は腎虚(じんきょ)の1つだけです。
元々、生命力が不足しているケースと、年齢と共に減少していくケースがあります。
腎虚は不足してるものによって以下の4つの症状に分けられます。
元気が不足している→腎陽虚
潤いが不足→腎陰虚
生命力の衰え→腎精不足
エネルギー不足→腎気不足
腎虚① 温める力がダウン!腎陽虚(じんようきょ)
腎を温める陽が不足している状態です。
主に冷えの症状が現れます。
足腰の冷え、無気力、インポテンツなど。
朝方は特に冷えるので下痢をすることが多いです。
治法は温補腎陽(ほおんじんよう)になります。
温めて陽気を高めます。
代表処方はハ味地黄丸(はちみじおうがん)です。
八味地黄丸には桂皮、炮附子など温める生薬が含まれ、陽虚に良く処方されます。
腎虚② 潤い不足!腎陰虚(じんいんきょ)
腎を冷やす潤いが不足している状態です。
眠いのに眠れない、多夢、月経量減少など陰液不足の症状が多く現れます。
治法は補滋腎陰(ほようじんよう)になります。
潤いを補います。
代表処方は六味地黄丸(ろくみじおうがん)です。
陰虚の症状に処方される漢方薬です。
腎虚③ そもそもの生命力の不足!?腎精不足(じんせいふそく)
生命力が不足している状態です。
発育の遅れ、インポテンツ、早期痴呆などの症状があります。
治法は補益腎精(ほえきじんせい)になります。
腎の不足を補います。
代表処方は海馬補腎丸(かいばほじんがん)です。
海馬はタツノオトシゴのことです。
加齢の虚弱体質改善に使われます。
腎虚④ 子どもがおねしょをするわけ 腎気不固(じんきふこ)
腎の気が下がっている状態です。
尿もれ、失禁、子どものおねしょ、早漏、流産など、固摂作用の失調から下に流れる症状が現れます。
治法は補腎固摂(ほじんこせつ)になります。
気を補い、固摂失調を改善します。
代表処方はハ味地黄丸(はちみじおうがん)です。
温めながら気を補います。
まとめ
腎の病証は腎虚の一つだけですが、
現れている症状によって治法と処方が異なります。
病証 | 主な症状 | 治法 | 代表処方 |
腎陽虚 | 足腰の冷え | 温補腎陽 | 八味地黄丸 |
腎陰虚 | 口渇、五心煩熱、多夢、寝汗 | 滋補腎陰 | 六味地黄丸 |
腎精不足 | 不妊、精子不足、痴呆 | 補益腎精 | 海馬補腎丸 |
腎気不足 | 尿もれ、幼児の夜尿 | 補腎固摂 | 八味地黄丸 |
発達と生殖を司どる腎は老化にも関係があります。
腰の痛み、耳鳴りがあるなら腎の不調かもしれません。