臓腑弁証の第3回目は”脾”の不調についてです。
3つの症状と、その治し方、処方される漢方薬について私の漢方ノートを公開していきます。
脾は気血水を生み出す重要な役割を担った臓です。
脾の代表的な働きは3つあります。
・気血水を作り出す
・血が脈外に漏れないようにする
・脾で作り出した気血水を上へあげたり、器官が下がらないように支える
脾がパワーダウンしている状態→脾気虚
脾気虚が進行して冷えや下痢の症状が現れる→脾陽虚
脾が苦手な湿邪によって機能が失調する→邪湿困脾
気不足で機能低下 脾気虚
脾の気が不足している状態を脾気虚と言います。
顔が黄色く、疲れやすい。
胃腸の調子が悪く、食後眠くなる。
このような症状があったら脾気虚かもしれません。
治法は益気健脾(えっきけんぴ)になります。
代表処方はさらに細かく分かれます。
運化失調して気血水を作れないのなら→脾不健運
臓器を正しい位置に留める昇堤が失調をしているのなら→中気下陥
血を漏れないようにする統血が失調しているなら→脾不統血
どこに問題があるか | 主な症状 | 代表処方 |
脾不健運 | 食後の膨満感、泥状便 | 四君子湯(しくんしとう) |
中気下陥 | 昇堤失調による下垂、失禁 | 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) |
脾不統血 | 統血が出来ないことで出血がある | 帰脾湯(きひとう) |
トラブルが起きた場所によって処方する漢方薬も異なります。
一般的に補中益気湯が使われることが多いようです。
温めパワーの減少 冷えが不調の原因に! 脾陽虚
脾気虚がさらに悪化すると脾陽虚になります。
腹部に冷えが生じているので、温めると楽になるのが特徴です。
冷えによる下痢、透明なおりものが出ることもあります。
治法は温中健脾(おんちゅうけんぴ)になります。
温めて脾の働きを高めます。
代表処方は小健中湯(しょうけんちゅうとう)です。
桂枝湯に水飴をプラスしたもので、本場の小健中湯はシナモンのいい香りがするそうです。
子どもの虚弱改善に処方される漢方薬です。
脾の大敵!湿に困っている 邪湿困脾
湿邪が脾に粘着質にまとわりつき困らせている病証です。
口の粘り、胃のむかつき、食欲不振の症状が現れます。
治法はきょ湿健脾(きょしつけんぴ)になります。
湿を取り除き、脾の機能を回復させます。
代表処方はさらに細かく分かれます。
病証 | 主な症状 | 代表処方 |
寒湿困脾 | 冷えによる下痢、無色透明なおりもの | 五苓散(ごれいさん) |
湿熱困脾 | 吐き気や嘔吐、黄色く匂いの強いおりもの | 茵蔯五苓散(いんちんごれいさん) |
冷えていたら温める生薬の入ったものを、熱があったら冷ましてあげる生薬が入ったものを選びます。
まとめ
脾が弱ると五臓にとって大事な気血水を供給できなくなります。
寒さに弱く、湿にも弱いという特徴があります。
病証 | 主な症状 | 治法 | 代表処方 |
脾気虚 | 胃腸の調子が悪い、疲れやすい、顔が黄色っぽい | 四君子湯(運化)、補中益気湯(昇堤)、帰脾湯(統血) | |
脾陽虚 | 脾気虚に加え、腹部に冷えがある | 温中健脾 | 小健中湯 |
邪湿困脾 | 口の粘り、胃のむかつき、食欲不振 | きょ湿健脾 | 五苓散(寒湿)、茵蔯五苓散(湿熱) |
3つの症状で覚えるのも楽勝と思いきや、症状は細かく分かれています。