不眠はなぜ起きるのか?漢方ではどのように考えるのか。治し方と、処方される漢方薬はどんなものがあるのか。私の漢方ノートを公開していきます。
漢方では不眠が起きるのは陰陽リズムの乱れているからだと考えます。
現代人は夜が長く、休んだり静かにしたりする陰の時間が不足しているのです。
四季の過ごし方や生活が不自然にならないように心がけたいものです。
生活のリズムが崩れると臓腑の失調から慢性的な不眠状態になります。
二つの臓腑の失調が複雑に影響しあっているところが特徴です。
不眠の原因① 陰陽のリズム乱れ
陽が昇っている間は活動し、陽が落ちれば休む。それが自然の摂理です。
しかし現代人はテクノロジーの発展ゆえに自然のリズムが崩れがちです。
・夜が長く、眠らないといけない時間に部屋を明るくしてスマホをしてしまう。
・スーパーでは一年中どんな野菜でも手に入る。
・暑い夏でも冷房の効いたオフィスにいるので体が冷えている。
特に休んだり静かにしたりする陰の時間が不足しているとされます。
その陰陽の乱れが不眠の原因とされています。
不眠の原因② 臓腑の失調、気血不足
不眠と関係のある臓は肝、心、脾、腎です。
臓腑の陽盛や陰虚、血の栄養が不足すると眠れなくなくなります。
熱がかっかして眠れなくなるか、気血が不足してヘロヘロになる2種類の不眠があります。
肝→肝気鬱結、肝火上炎、肝陽上亢
心→心火上炎
脾→脾気虚、心脾両虚
腎→心腎不交
かっか来ている不眠は肝火上炎と心火炎上です。
肝の失調すると熱が溜まり神明に影響を与え不眠が発生します。
心血虚で寝るためのエネルギーが不足しても眠れなくなります。
脾の働きの低下で運化の失調があると、血を作ることが出来ず心脾両虚になって眠れなくなります。
弁証のポイント
病程・・・急性、初期
臓腑・・・肝火上炎、心火上炎(熱がこもっている)
特徴・・・便秘や口が苦いなどの症状を伴う。怒りっぽい。
病程・・・慢性、長期
臓腑・・・肝血虚(気血陰液の不足)
特徴・・・すっきりしない不眠、虚熱
不眠のタイプ別 治法と代表処方
タイプ | 症状 | 治法 | 代表処方 |
肝火上炎、心火上炎 | イライラして眠れない、熱が溜まっている | 清熱瀉炎(せいねつしゃえん) 鎮静安神(ちんせいあんしん) | 柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)黄連解毒湯(おうれんげどくとう) |
肝血虚 | 眠いが眠れない 血虚を伴う症状が現れる | 滋補肝血(じほかんけつ) | 酸棗仁湯(さんそうにんとう) |
心脾両虚 | 眠いが眠れない 気の働きの失調。 | 補益心脾(ほえきしんぴ) | 加味帰脾湯(かみきひとう) |
心腎不交 | 眠れない。夜中に目が覚める。腎陰が不足し心陽が上がっている。 腎の不調が現れる。 | 交通心腎(こうつうしんじん) | 六味地黄丸(ろくみじおうがん) 清心蓮子飲(せいしんれんしいん) |
不眠で悩んでいる人へのアドバイス
ケース1
3ヶ月前に転職に成功したが、新しい職場環境や営業ノルマがストレスになって憂鬱だ。目が冴えて眠れなくて困っている。ストレス発散のためにキムチと焼肉を良く食べる。下の先が赤く、点刺がある。(40代男性)
外感病ではないので裏証と考えます。
舌が赤く全体的に熱がこもっていそうなので熱証。
体力は充実しているので実証と考えます。
八網弁証:裏 熱 実
病証名:肝火上炎
代表処方:柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡で熱を下げ、竜骨で全体を下げて様子を見ます。
似ている症状の見分け方
肝火上炎と肝陽上亢の見分けかた→足腰の症状や耳鳴りがあるのなら腎の不調を伴っている可能性もあると考え肝陽上亢だと考えます。
また体側に痒み、陰部の痒み、目脂がある場合→竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の方が良いかもしれません。
【生活習慣】
・何か一つだけでもいいので、食事時間や寝る時間を決めて実行する。
・ストレス解消を心がける。運動、入浴、アロマ。
・ツボを押す。
【食生活のアドバイス】
・気滞を解消するために香味野菜がおすすめ。パクチー、セロリ、春菊。
・柑橘類の爽やかな酸味
・寒涼性の食品を取る。菊花、ミントのお茶などおすすめ。
熱が篭っているので、熱を取ることが先決!身体を冷やしながら、入眠しやすくなるようにアドバイスをします。
ケース2
眠いのに眠れない。家で持ち帰りの仕事をすることが多く、目がとても疲れている。月経も遅れており、2ヶ月に1度しかこない。舌質は裂紋。(30代女性)
血虚の症状が顕著です。目のトラブルの訴えがあることから肝血虚と弁証します。
八網弁証:裏、虚
気血水弁証:血虚
臓腑弁証:肝
病証名:肝血虚(かんけっきょ)
治法:滋補肝血(じほかんけつ)
代表処方:酸棗仁湯(さんそうにんとう)
血虚になると虚熱が発生するので知母(ちも)で熱をとります。
【生活習慣】
・夜まで仕事をしないでを血の消耗を防ぎます。
・程度に休憩を取り、安眠のツボを押すのも良いです👍
・23時には寝ましょう。真夜中は肝胆の時間なので、休ませてあげましょう。
【食生活のアドバイス】
・赤黒食材やナッツ類で潤いを補います。
・酸甘化陰と言って、酸味と甘味を一緒に摂取すると陰液を補うと考えられています。おやゆに梅干しを入れたり、蜂蜜レモンなどおすすめです。
眠りの栄養が足りず眠れなくなっていると考えます。
潤いを補い、これ以上血を消耗しないようにアドバイスします。