2つの臓腑が同時に具合が悪くなることを臓腑兼病と言います。
パターンとして相生の異常と相剋の異常があります。
代表的な症状は以下の4つです。
隣り合った臓が同時に悪くなる。相生の異常→心脾両虚、肝腎陰虚
相剋状態の臓の対立が激しくなる。相剋の異常→肝脾不和、心腎不交
五行の図を見ると、位置関係を理解しやすくなります。
肝脾不和 肝の力が増量し、脾が衰える
肝気鬱結+脾気虚の状態です。
肝が鬱結することで疏流が失調し、脾にエネルギーが行かなくなっている状態です。
治法は疏肝健脾(そかんけんぴ)になります。
肝(木)を落ち着かせ、脾(土)を元気に養います。
パターンは2つあります。
肝→強い | 脾→普通 |
肝→普通 | 脾→弱い |
どちらも肝の勢いが脾に対して強くなっている状況です。
中国には”抑木扶土”(よくもくふど)という考え方があります。
木の勢いが強すぎる時、まず土を豊かにしてバランスを取るという作戦です。
代表処方は加味逍遙散(かみしょうようさん)です。
婦人のお薬というイメージが強いですが、症状があえば男性に処方されることもあります。
心脾両虚 気血水全てが足りない
心血虚と脾気虚が同時に起きている病証です。
脾気虚になると気血の生成が出来なくなり、統血も失調して心血虚になります。
すると、脾に供給する血の量が減り、脾を滋養出来なくなり血不足になります。
負の循環が延々と起きることになります。
治法は補益心脾(ほえきしんぴ)になります。
どちらも補ってあげます。
代表処方は帰脾湯(きひとう)です。
心脾両虚など心身の疲れによく処方される漢方薬です。
帰脾湯は出題率の高い漢方薬なので、詳しく成分もチエックして起きます。
人参、黄耆は気を高め、
当帰、竜眼肉は補血の増やし、
白朮、茯苓は理水効果があり、
遠志は心を落ち着ける安神作用がある
酸棗仁は不眠に効くとされ
甘草、木香は痛み留め、
大棗、生姜など温める効果のある生薬も入っています。
両虚と陰虚の違い
両虚・・・気と陰液の両方が足りない
陰虚・・・血と水が足りない
肝腎陰虚 陰液不足で焦げ付いている
肝陰虚と腎陰虚が同時に現れている症状です。
五行表で隣り合っている肝と腎は相生の関係にあります。
どちらかの具合が悪いと、ひきづられるように片方の具合が悪くなる。
仲良しの関係が悲劇の連鎖になっている状況です。
肝は血を蔵し、腎は精を蔵します。
肝腎陰虚の症状の一つに健忘がありますが、これは肝血虚なのか腎陰虚なのか見定める必要があります。
目の不調や眠れないという訴えがあるなら→肝
耳鳴りや腰のだるさの訴えがあれば→腎
治法は滋補肝腎(じほかんじん)になります。
陰液で肝腎をうるおしてあげます。
代表処方は杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)です。
六味地黄丸に枸杞と菊花をプラスした漢方薬です。
菊花と枸杞はとても目にいい組み合わせです。
肝血が増えると腎も元気になると言われています。
地黄丸は腎陰虚、腎陽虚など腎に関係するところで使われる漢方薬です。
心腎不交 火が水を焼き尽くす
腎陰不足と心陽上昇が起きている状態です。
陰が不足して、心が燃えています。
不眠、動悸、眠れないなどの心火上炎の症状と同時に、五心煩熱など陰虚の症状が現れます。
相剋の関係の心と腎ですが、互いが熱くなりすぎず、冷えすぎないようにバランスを取っています。
腎陰は心が温まりすぎないように冷やします。
腎陽は心に温めてもらっています。
お互いを働かせるように冷熱を交換しているのです。
ところが心腎不交になると、腎陰の冷やす力が失調し熱が燃え上がります。
治法は交通心腎(こうつうしんじん)になります。
離れ離れになった心と腎が交わるようにします。
代表処方は清心蓮子飲(せいしんれんしいん)です。
心熱や不眠の改善によく使われる漢方薬です。
まとめ
2つの臓腑が同時に具合が悪くなることを臓腑兼病と言います。
パターンとして相生の異常と相剋の異常があります。
病証 | 主な症状 | 治法 | 代表処方 |
肝脾不和 | イライラ、胃のむかつき、腹部膨満、ため息 | 疏流健脾 | 加味逍遙散 |
心脾両虚 | 動悸、慢性疲労、食欲不振、下痢 | 補益心脾 | 帰脾湯 |
肝腎陰虚 | 肝血虚と腎陰虚の状態、健忘など | 滋補肝腎 | 杞菊地黄丸 |
心腎不通 | 心と腎のバランスが崩れた状態、不眠など | 交通心腎 | 清心蓮子飲 |
臓腑兼病の4つのパターンは色々な症例で使うので、
しっかり覚えたいですね!