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漢方ノート

【漢方ノート6】臓腑兼病 2つの臓腑が同時に発病しているケース

2つの臓腑が同時に具合が悪くなることを臓腑兼病と言います。

パターンとして相生の異常と相剋の異常があります。

代表的な症状は以下の4つです。

隣り合った臓が同時に悪くなる。相生の異常→心脾両虚肝腎陰虚

相剋状態の臓の対立が激しくなる。相剋の異常→肝脾不和心腎不交

漢方女史

五行の図を見ると、位置関係を理解しやすくなります。

肝脾不和 肝の力が増量し、脾が衰える

肝気鬱結+脾気虚の状態です。

肝が鬱結することで疏流が失調し、脾にエネルギーが行かなくなっている状態です。

治法は疏肝健脾(そかんけんぴ)になります。

肝(木)を落ち着かせ、脾(土)を元気に養います。

パターンは2つあります。

肝→強い脾→普通
肝→普通脾→弱い

どちらも肝の勢いが脾に対して強くなっている状況です。

中国には”抑木扶土”(よくもくふど)という考え方があります。

木の勢いが強すぎる時、まず土を豊かにしてバランスを取るという作戦です。

代表処方は加味逍遙散(かみしょうようさん)です。

婦人のお薬というイメージが強いですが、症状があえば男性に処方されることもあります。

心脾両虚 気血水全てが足りない

心血虚と脾気虚が同時に起きている病証です。

脾気虚になると気血の生成が出来なくなり、統血も失調して心血虚になります。

すると、脾に供給する血の量が減り、脾を滋養出来なくなり血不足になります。

負の循環が延々と起きることになります。

治法は補益心脾(ほえきしんぴ)になります。

どちらも補ってあげます。

代表処方は帰脾湯(きひとう)です。

心脾両虚など心身の疲れによく処方される漢方薬です。

帰脾湯は出題率の高い漢方薬なので、詳しく成分もチエックして起きます。

人参、黄耆は気を高め、

当帰、竜眼肉は補血の増やし、

白朮、茯苓は理水効果があり、

遠志は心を落ち着ける安神作用がある

酸棗仁は不眠に効くとされ

甘草、木香は痛み留め、

大棗、生姜など温める効果のある生薬も入っています。

両虚と陰虚の違い

両虚・・・気と陰液の両方が足りない

陰虚・・・血と水が足りない

肝腎陰虚 陰液不足で焦げ付いている

肝陰虚と腎陰虚が同時に現れている症状です。

五行表で隣り合っている肝と腎は相生の関係にあります。

どちらかの具合が悪いと、ひきづられるように片方の具合が悪くなる。

仲良しの関係が悲劇の連鎖になっている状況です。

肝は血を蔵し、腎は精を蔵します。

肝腎陰虚の症状の一つに健忘がありますが、これは肝血虚なのか腎陰虚なのか見定める必要があります。

目の不調や眠れないという訴えがあるなら→肝

耳鳴りや腰のだるさの訴えがあれば→腎

治法は滋補肝腎(じほかんじん)になります。

陰液で肝腎をうるおしてあげます。

代表処方は杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)です。

六味地黄丸に枸杞と菊花をプラスした漢方薬です。

菊花と枸杞はとても目にいい組み合わせです。

肝血が増えると腎も元気になると言われています。

地黄丸は腎陰虚、腎陽虚など腎に関係するところで使われる漢方薬です。

心腎不交 火が水を焼き尽くす

腎陰不足と心陽上昇が起きている状態です。

陰が不足して、心が燃えています。

不眠、動悸、眠れないなどの心火上炎の症状と同時に、五心煩熱など陰虚の症状が現れます。

相剋の関係の心と腎ですが、互いが熱くなりすぎず、冷えすぎないようにバランスを取っています。

腎陰は心が温まりすぎないように冷やします。

腎陽は心に温めてもらっています。

お互いを働かせるように冷熱を交換しているのです。

ところが心腎不交になると、腎陰の冷やす力が失調し熱が燃え上がります。

治法は交通心腎(こうつうしんじん)になります。

離れ離れになった心と腎が交わるようにします。

代表処方は清心蓮子飲(せいしんれんしいん)です。

心熱や不眠の改善によく使われる漢方薬です。

まとめ

2つの臓腑が同時に具合が悪くなることを臓腑兼病と言います。

パターンとして相生の異常と相剋の異常があります。

病証主な症状治法代表処方
肝脾不和イライラ、胃のむかつき、腹部膨満、ため息疏流健脾加味逍遙散
心脾両虚動悸、慢性疲労、食欲不振、下痢補益心脾帰脾湯
肝腎陰虚肝血虚と腎陰虚の状態、健忘など滋補肝腎杞菊地黄丸
心腎不通心と腎のバランスが崩れた状態、不眠など交通心腎清心蓮子飲
漢方女史

臓腑兼病の4つのパターンは色々な症例で使うので、

しっかり覚えたいですね!