臓腑弁証の第4回目は”肺”の不調についてです。
6つの症状と、その治し方、処方される漢方薬について私のノートを公開していきます。
肺の大きな働きは2つあります。
・呼吸をして気を巡らせる
・水道通調整で水を巡らせる。(宣発で水を発散し、粛降によって不要な水を下げる。)
肺は潤っている状態を好み、五臓の中では高い位置にあるため外邪の影響を受けやすいのが特徴です。
風寒の邪気の影響→風寒犯肺(ふうかんはんぱい)
風熱の邪気の影響→風熱犯肺(ふうねつはんぱい)
また、水を司る働きがあり、それが阻害されると不具合が生じます。
うるおいが過剰になる→痰湿阻肺(たんしつそはい)
肺が乾燥と熱に侵されている→燥熱傷肺(そうねつしょうはい)
肺は気と関係が深い臓であり、気が失調すると働きが悪くなります。
肺の気不足→肺気虚(はいききょ)
肺の潤いが不足している→肺陰虚(はいいんきょ)
冬の風邪 風寒犯肺(ふうかんはんぱい)
肺が風寒邪に侵入され、宣発と粛降が失調した状態です。
咳や鼻詰まり、悪寒、軽度の発熱など風邪の症状が現れます。
鼻水や痰が白っぽいのが特徴です。
治法は散寒宣肺(さんかんせんはい)になります。
寒邪を散らして、宣発を正常化します。
代表処方は香蘇散(こうそさん)です。
蘇葉(しそ)が含まれた漢方薬です。
軽い発散の効果があり風邪の引き始めに用います。
虚弱な人向けです。
春夏の風邪 風熱犯肺(ふうねつはんぱい)
風寒犯肺の逆パターンです。
熱風邪が肺に侵入して宣発が失調します。
咳や鼻詰まり、軽度の悪寒、頭痛、発熱など風邪の症状が現れます。
鼻水や痰が黄色いのが特徴です。
治法は清熱宣肺(せいねつせんはい)になります。
熱を下げて宣発を正常化します。
代表処方は荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)です。
春の風邪に使われる漢方薬です。
地黄、黄連、黄芩など身体を冷やす黄色い生薬が含まれていますね。
黄連解毒湯に四物湯をプラスした組成になります。
湿と痰が肺に侵入 痰湿阻肺(たんしつそはい)
余分な水分である痰と湿が肺に停滞すると、宣発と粛降が失調します。
風寒犯肺がさらに悪化した状態です。
胸が詰まった感じがしたり、白い痰がいっぱい出ます。
肺は潤いを好みますが、潤い過ぎてもだめなんですね。
治法は燥湿化痰(そうしつかたん)になります。
湿を乾燥させ、痰にして出します。
代表処方は二陳湯(にちんとう)です。
半夏と陳皮の生薬が配合されており、痰を取り除く効果があります。
ちなみに陳皮はみかんの皮のことです。
気滞や水滞に良いとされています。
熱が肺を傷つけている 燥熱傷肺(そうねつしょうはい)
肺が乾燥と熱に侵されると、宣発と粛降が失調します。
風熱犯肺がさらに悪化して、熱が肺を傷つけている状態です。
空咳、口渇、喉の痛み、頭痛、発熱などの症状が現れます。
治法は清肺潤燥(せいはいじゅんそう)になります。
肺の熱を冷まし、潤します。
代表処方は五虎湯(ごことう)です。
気管支喘息で処方される漢方薬です。
肺のエネルギー不足 肺気虚
肺の気が不足をしている状態です。
息切れがしたり、風邪を引きやすくなったり、元気がなかったりします。
元気が無いという点で血虚も疑わしいですが、判別のポイントは以下の通りです。
自汗、声が小さい→気の失調のサイン
爪が脆くなった、眠れない、不安感がある→血虚のサイン
治法は補益肺気(ほえきはいき)になります。
脾の気を養い、肺をパワーアップします。
代表処方は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。
補中益気湯は気虚の症状に良く使われる漢方薬です。
気や内臓が下がってしまったとき、持ち上げる効果があるとされています。
潤い不足で肺がガラガラ 肺陰虚
潤いを好む肺の陰液が不足している状態です。
夕方からの空咳は肺陰虚のサインかもしれません。
治法は滋陰潤肺(じいんじゅんはい)になります。
陰液不足を補い肺を潤します。
代表処方は麦門冬湯(ばくもんどうとう)です。
咳や喘息に処方される漢方薬です。
潤いを増します。
まとめ
肺が弱ると、気と水の運行に影響が出ます。
肺は潤いを好むので、治法多くは潤いを補うものになっています。
ただし、潤いすぎて湿が溜まっても具合が悪くなるので要注意。
病証 | 主な症状 | 治法 | 代表処方 |
風寒犯肺 | 風邪の初期症状。鼻水、痰(白っぽい) | 散寒宣肺 | 香蘇散 |
風熱犯肺 | 風邪の初期症状。鼻水、痰(黄色っぽい) | 清熱宣肺 | 荊芥連翹湯 |
痰湿阻肺 | 胸の苦しさ、白い痰が多い。 | 燥湿化痰 | 二陳湯 |
燥熱傷肺 | 空咳、口渇、喉の痛み。 | 清肺潤燥 | 五虎湯 |
肺気虚 | 風邪を引きやすい、声が小さい、顔が白い。 | 補益肺気 | 補中益気湯 |
肺陰虚 | 夕方からの空咳。 | 滋陰潤肺 | 麦門冬湯 |
肺と親子関係にある臓腑である脾を強くすることで、肺を強くすること考えます。
この考えを”培土生金”といいます。