皮膚疾患はなぜ起きるのか?漢方ではどのように考えるのか。治し方と、処方される漢方薬はどんなものがあるのか。私の漢方ノートを公開していきます。
中医学では皮膚は内臓の鏡と考え、疾患のある皮膚の一部を局地的に治療するのではなく、整体観念から全体を見て改善をしていきます。
皮膚病の原因は主に外感、血と考えます。
外感→風、熱、湿
血→血虚、瘀血
原因が表証なのか裏証なのか、見極めがポイントになります。
外感が原因の皮膚病
風邪
外邪が体表から侵入すると、衛気の乱れ、気血の巡りが失調し、皮膚に影響が起きます。
風の特性を持つので、病状が忙しない。熱や湿の邪気と連合して現れるのも特徴です。
熱邪
火の性質を持つので症状が人体の上へと現れます。病状の進行が早く、熱を伴います。皮膚の赤み、腫れ、痛み、痒みがあります。
湿邪
湿が外や中の熱が皮膚に留まり化膿させます。ジュクジュクした痒み、水疱、びらんなど。
慢性化しやすいのが特徴です。
外や中から湿が発生する、脾の運化失調、水湿が溜まる、皮膚に現れる、湿が停滞して湿熱を生む。帯状疱疹など。
血が原因の皮膚病
【血虚】
過労や飲食の不節により脾の運化が失調し、血が不足するとうるおいが不足して皮膚病になります。
皮膚の栄養が足りず乾燥すると、陰液がさらに消耗して陰火します。
そして内風が発生し、体表に痒みが発生します。
病状が長期化する傾向にあり、皮膚の乾燥、髪に艶が無いなどの症状が現れます。
【瘀血】
血行不良で局部に血が止まりやすい。シミが出来やすい。
皮膚の色素沈着、皮膚が硬くなるなどの症状が合わられます。
シミやカンパンは瘀血と考えます。
皮膚病のタイプ別 治法と代表処方
タイプ | 症状 | 治法 | 代表処方 |
風邪 | 春に発症しやすい。温めると悪化。強い痒み赤みと熱感。 | 辛涼きょ風止痒(せいねつふうしよう) | 消風散(しょうふうさん)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)清上防風湯(せいじょうぼうふうとう) |
湿邪 | 梅雨に発症して悪化しやすい。赤く腫れてジュクジュクする。 | 清熱利湿(せいねつりしつ) | 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)消風散(しょうふうさん) |
熱邪 | 春夏に悪化しやすい。赤みと灼熱感がある痒み。 | 清熱解毒(せいねつげどく) | 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)温清飲(うんせいいん) |
血虚 | 秋冬に悪化しやすい。皮膚の乾燥。 | 養血きょ風止痒(ようけつふうしよう) | 当帰飲子(とうきいんし)温清飲(うんせいいん) |
瘀血 | 皮膚病が慢性化して乾燥して硬くなる。 | 活血化瘀(かっけつかお) | 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) |
湿熱と熱血の判定方
舌に苔が厚く生えている場合、湿があると考えられます。
黄色というキーワードが多い場合、熱毒が考えられます。
肌のトラブルで悩んでいる人へのアドバイス
漢方では皮膚は内臓の鏡と考えます。
肌のトラブルは皮膚表面だけのことではなく、体内の気血水の乱れ、五臓六腑からのS O Sと心得ます。
例を元にアドバイスを考えてみます。
春先から頭に赤い湿疹が出来始めました。夏にもっと広範囲に広がって患部が化膿してしまいました。秋になって皮膚科でもらったステロイドを塗っていますが全然効かないんです。妻も私もワインが好きなので、揚げ物と一緒に毎晩晩酌をしています。(40代男性)
こんな相談があった場合、まずは八綱弁証をします。
病程が長いので病位は裏証、
赤い湿疹は明らかに熱を持っているので熱証と考えます。
舌質や舌苔も手がかりになります。舌質が紅く、舌苔が黄だったらやはり熱証です。
腫れて化膿しているということは、症状が激しいので実証です。
熱毒で肌の炎症が起こっているようですね。
先ずは清熱解毒で熱を取ることを優先しましょう。ステロイドはその後ですね。
漢方薬は黄連解毒湯がおすすめです。黄連、黄芩、黄柏の生薬が含まれているので冷やす効果が高く、赤みを伴う皮膚の炎症に効果があります。
【生活】
ひょっとするとストレスが溜まっていてついついお酒を飲んでしまうのかもしれません。
気分転換に軽い運動もおすすめです。
民間薬なら中黄膏がいいです。黄柏や鬱金が入っているので熱を取る効果があります🟡
【食べ物】
お酒と揚げ物は体内に熱を籠らせるので、今は控えた方がいいですね。
お茶は清熱作用のある緑茶、菊花茶、ドクダミ茶などがおすすめです🍵
体内に熱がこもっているので寒涼性の食材を取り入れます。夏野菜、ゴーヤ、なす、トマトなどいいですね👍
毎年秋〜冬にかけて肌が乾燥して痒い。皮膚は黄色っぽくツヤが無い。年齢と共に肌の乾燥がどんどんひどくなる。階段を上がると動悸がしたり、たまに立ちくらみやめまいもある。夜、足が攣って、目が覚めてしまうことがある。夢も良くみます。(60代男性)
秋冬は乾燥しやすい季節です。潤い不足と考えられますが、高齢者の相談であるところが引っ掛かります。
動悸、立ちくらみ、めまい、足が攣る、多夢・・・どうやら血虚のようです。
血を養って、内風を止め、痒みを治療します。
漢方薬は当帰飲子がおすすめです。血を養って潤します。
【生活】
皮膚の乾燥を防ぐために保湿剤を塗ります。
加湿器で部屋を保湿します。
夜更かし、スマホは禁止!
【食べ物】
赤黒食材。赤身のお肉や黒食材(ひじき、キクラゲ、黒豆など)で血を補います。
潤す白の食材がおすすめです。
ナッツ類もいいですね👍
高齢者の場合、陰虚傾向で、血と同時に気も不足している場合もあります。
なので芋類、穀類で気を補うことも大事です。
甘味+酸味(酸甘化陰)の組み合わせ、おかゆ+梅干しも良い組み合わせです。