めまいはなぜ起きるのか?漢方ではどのように考えるのか。治し方と、処方される漢方薬はどんなものがあるのか。私の漢方ノートを公開していきます。
漢方ではめまいの原因は、風、痰、虚と考えます。
風が原因のめまい→肝陽上亢(かんようじょうこう)
痰が原因のめまい→痰飲(たんいん)
虚が原因のめまい→気虚血虚(ききょけっきょ)
めまいの種類によってどの臓腑が悪いのか検討をつけます。
風のめまい
めまいと風は関係があり、風の揺り動かす性質はめまいやふらつきを発生させると考えます。
ストレスや怒りで肝気鬱結すると、身体の中に巨大な火が生まれます。
腎の陰虚も同時に起こるので、発生した熱が余計に燃え上がり風を生みます。
その風が身体をゆり動かすと考えます。
これが肝陽上亢のめまいです。
痰のめまいは脾に原因があり
体内に汚れた水が停滞して脾の働きが失調すると、さらに体内に湿が溜まります。
それが頭部に溜まると水穀の精微が頭に届かなくなり、めまいが発生します。
湿が脾を阻害し、水が溜まり、その水が更に脾を痛めるという悪循環に・・・
このような痰湿による回転性のめまいが起きるのが特徴です。
水が溜まっているので梅雨に体調を崩しやすく、頭が重だるい、むくみなどの症状があります。
虚が原因のめまい
虚のめまいには2つのパターンがあります。
気虚血虚
気血の栄養不足で、頭部が滋養出来ずめまいが発生します。
パワーが不足しており、疲れるとめまいがするところが特徴です。
腎精不足
腎不足で頭部を養うことが出来ず、めまいや健忘が起きます。
どちらも激しいめまいではありませんが、症状が長引くのが特徴です。
弁証のポイント 虚か実か?
実証なら瀉法、虚証なら補法で治します。
肝と痰のめまいは何かが過剰ゆえに不調が起きると考えるので瀉法で治療します。
動悸息切れ、ふらつき、顔が白っぽい時は気虚血虚、耳鳴り健忘を伴うふらつきは腎精不足です。補法で治療します。
めまいのタイプ別 治法と代表処方
タイプ | 症状 | 治法 | 代表処方 |
肝陽上亢 | 激しいめまい、強い頭痛。 | 平肝熄風 (へいかんそくふう) | 釣藤散(ちょうとうさん)抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんちんぴはんげ) |
痰飲 | 回転性のめまい。むくみ。 | 化痰きょ湿(かたんきょしつ)、 健脾和胃(けんぴわい) | 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) |
気虚血虚 | フラつくようなめまい。動悸。 | 補気補血(ほきほけつ) | 加味帰脾湯(かみきひとう)、十全大補湯(じゅうぜんだい |
腎精不足 | 常に弱いめまい。耳鳴り、足腰のだるさ | 補益腎精(ほえきじんせい) | 六味地黄丸(ろくみじおうがん)八味地黄丸(はちみじおうがん) |
めまいで悩んでいる人へのアドバイス
相談者A
昨年からめまいが始まりだんだん悪化している。強い頭痛、手足や胸のほてりがある。ちょっとしたことで怒りっぽくなっており、怒った後にめまいが発症することが多い。(55歳男性既婚)
八網弁証 | 裏証、寒熱証、実証 |
気血水弁証 | 陰虚 |
臓腑弁証 | 肝 |
怒りっぽいのは肝の不調と考えて良いでしょう。
手足や胸のほてり、これは年齢的に考えて陰虚である可能性が高いです。
相談者Aさんへの回答
肝に熱を帯びていることから肝火上炎、また肝陰虚にもなっているようです。
肝陽上亢タイプのめまいがある人は怒らないことが肝心です。
陰の時間(夕方から夜)はしっかり休息をとって下さい。
また、ウォーキングなど運動も気の巡りを良くして、ストレス発散に役立ちます。
腎を養う黒い食べ物(黒豆、黒キクラゲ、黒胡麻)を取り入れた食事もおすすめです。
お茶は柑橘類、ミント、菊花茶が良いですね。
痰飲タイプの人は湿を溜めず利水する生活を意識します。
特に六月は注意!
豆類を積極的に取って、身体を冷やす生ものを摂取するのは控えましょう。
気虚血虚タイプは赤と黒の食材を積極的に取ります。
気を巡らせるために軽い運動がおすすめですが、体が弱っているので無理は禁物です。