便秘はなぜ起きるのか?漢方ではどのように考えるのか。治し方と、処方される漢方薬はどんなものがあるのか。私の漢方ノートを公開していきます。
便秘は大腸の伝導機能が失調して、大便が腸の中に滞留しすることで起きると考えられています。
3日以上長い間出ないという状態だけでなく、毎日の大便が硬くて排便が辛いという状態も便秘と考えます。
原因は2つ考えられます。
・潤い不足している
・押し出す力が弱い
便秘は何がが詰まっている状態なので基本は実証と考えますが、
高齢者や出産直後の妊婦など身体の弱い人の虚証の便秘もあります。
実証の人には瀉下剤(大黄、芒硝)を使うことがありますが、虚証の人は瀉下剤を含まない漢方薬を処方します。
弁証を間違えると治らなくなるどころか、余計にダメージを与えてしまうこともあるため注意が必要です。
便秘のタイプ
【潤い不足】
①熱結(ねっけつ)
腸に熱がこもっている。過度な飲酒、刺激物の過食が原因。
大便が固まり排便が困難になる。
実証の便秘。
②腸燥(ちょうそう)
陰液が不足している。出産後、血の不足で便秘になる妊婦の相談は多い。虚証の便秘。
【押し出す力の不足】
①気滞(きたい)
内傷七情や極度の緊張、運動不足(同じ姿勢で座ったままなど)、押し出す気が不足して大便を押し出すことが出来ない。実証の便秘です。
②気虚(ききょ)
気不足で腸を動かすことが出来ない。高齢者の便秘に多い。虚証の便秘。
③虚寒(きょかん)
お腹の冷えで便秘が起こる。高齢者の便秘に多い。虚証の便秘。
瀉下剤
便秘の薬というと下剤を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、
排便を促す瀉下剤は2つの種類があります。
攻下(強く瀉下する下剤) | 大黄、芒硝 |
潤下(腸を潤して排便を促す) | 麻子仁 |
体が弱いという自覚のある人は攻下剤はやめておいた方がいいですね。
便秘は下剤に頼らなくても改善する方法があります。
便秘のタイプ別 治法と代表処方
タイプ | 治法 | 代表処方 |
熱結(ねっけつ) 熱邪や過度の飲食で熱が固まっている。 | 清熱通便(せいねつつうべん) | 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう) |
腸燥(ちょうそう) 虚弱体質で気血水が不足している。 コロコロ便。妊婦、高齢者など | 潤腸通便(じゅんちょうつうべん) | 麻子仁丸(ましにんがん)※瀉下が強い 潤腸湯(じゅんちょうとう)※血虚の症状に処方する。当帰と地黄で補血効果が高い。 |
気滞(きたい) 内傷七情や運動不足で気が滞っている。便秘と下痢を繰り返す。 | 理気通便(りきつうべん) | 大柴胡湯(だいさいことう) 加味逍遙散(かみしょうようさん) |
気虚(ききょ) 虚弱体質、過労、病後、加齢など。気が不足している。 | 補気通便(ほきつうべん) | 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 六君子湯(りっくんしとう) |
虚寒(きょかん) お腹が冷えて腸の動きが鈍くなる。陽虚の状態。 | 温中通便(おんちゅうべんつう) | 小建中湯(しょうけんちゅうとう)桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) |
腸燥の処方の判断に迷ったら?
・津液・陰液の消耗が強い・・・麻子仁丸
・血虚の消耗が強い・・・潤腸湯
出産後や病気で血を失った人の便秘には潤腸湯が良いでしょう。
気滞の処方の判断に迷ったら?
・体力がある、高血圧や肥満がある場合・・・大柴胡湯
・体力が中以下で精神不安や不定愁訴が伴う場合・・・加味逍遙散
気虚の処方の判断に迷ったら?
・脱肛や胃下垂など気陥傾向・・・補中益気湯
・水滞による軟便傾向・・・六君子湯
虚寒の処方の判断に迷ったら?
・子どもや高齢者など虚弱な人のお腹の冷え・・・小建中湯
・腹部膨満、腹痛がある、しぶり腹・・・桂枝加芍薬湯
便秘に悩んでいる人のライフケア
排便のリズムをつけるために、生活習慣を整えます。
朝起きる時間、夜寝る時間を決めて規則正しく生活すると排便のリズムも整います。
全部きちんとすることが難しいのであれば、何か一つでも良いから初めてみましょう。
特に朝の時間をゆっくり過ごすことがおすすめです。
漢方には体内時計の概念があり、朝5時から7時は大腸の時間帯になります。
朝が忙しいと便秘になりやすいので、早起きしてゆっくり過ごしたいですね。
西洋医学的にも人は何かを取り入れる時間と排泄する時間があると考えられており、ゆっくりトイレに行くの西洋東洋医学の観点から非常に理にかなっているのです。
便秘に悩んでいる人におすすめの食事
タイプによって効果がある食材は違います。
気滞 | 野菜、海藻の不足が考えられます。食物繊維を積極的に摂取しましょう。ストレスが強いのであれば、香味野菜や柑橘類も気分をリフレッシュさせてくれます。 |
腸燥 | 腸を潤す必要があります。甘味と酸味を一緒に食べると効果的です。 |
血虚 | 赤と黒の食材で身体を潤します。レバーなどタンパク質を積極的に摂りましょう。 |
虚寒タイプはバナナを食べて余計に冷えて、便秘改善にならないので注意が必要です。
ご自身の体質にあった食事で改善しましょう。